全国有数のしじみ産地として知られる宍道湖。養殖ではなく、湖の中で自然に育つヤマトシジミを漁獲しているにもかかわらず、なぜ長年にわたってしじみ漁を続けられているのでしょうか。その背景には、汽水湖ならではの豊かな環境だけでなく、休漁日や漁獲量を定めた操業ルール、資源の変化を見守る継続的な調査があります。宍道湖のしじみを未来へ残すために、どのような取り組みが行われているのかを詳しく見ていきましょう。
「宍道湖のしじみが長く愛されるのには、ちゃんと理由があるんだよ!」
宍道湖のしじみ資源を守る4つの操業ルール

宍道湖では、しじみがいるからといって、いつでも好きなだけ獲れるわけではありません。
宍道湖漁業協同組合では、休漁日や操業時間、1日に採捕できる量、使用する漁具などについて操業規程を設けています。漁業者が共通のルールを守ることで、一度に獲りすぎない仕組みがつくられています。
漁を続けるために定められた採捕の決まり
ここからは、宍道湖で守られている主な4つのルールを見ていきましょう。
① 漁ができるのは週4日
宍道湖のしじみ漁は、原則として月曜日・火曜日・木曜日・金曜日に行われます。
水曜日・土曜日・日曜日は休漁日です。毎日操業するのではなく、漁を行わない日を設けることで、しじみにかかる採捕圧を抑えています。
単に漁師が休むための休日ではなく、限りある資源を利用しながら漁業を続けるための決まりです。
② 操業時間は3〜4時間以内
漁ができる日であっても、一日中しじみを獲り続けられるわけではありません。
機械掻きによる操業は3時間以内、手掻き・入り掻き・水流式は4時間以内と定められています。操業の開始時刻も季節によって異なり、決められた時間の範囲で漁が行われます。
時間に上限を設けることで、必要以上に漁場を掘り続けることを防いでいます。
③ 1日に採捕できる量は約90kgまで
漁業者が1日に採捕できるしじみは、専用箱2杯分に当たる約90kgまでです。
漁場に多くのしじみがいても、決められた量に達すれば、その日の採捕は終了します。漁獲できる量に上限を設けることは、目の前の漁獲だけでなく、今後の資源を残すための重要な仕組みです。
ただし、ヤマトシジミの資源量は毎年一定ではありません。自然環境によって増減するため、採捕量を制限していれば必ず安定するというものではなく、資源の状態を継続して確認する必要があります。
④ 小さなしじみを残す漁具と選別
しじみ漁に使われる「ジョレン」は、熊手のような爪と、しじみを受けるかごを組み合わせた漁具です。
宍道湖ではジョレンの目の間隔を11mm以上とし、小さなしじみを採捕しにくい構造にしています。漁獲後の選別で10mm以下のしじみが見つかった場合には、湖へ戻されます。
これから成長する小さなしじみを残すことも、次の漁につながる資源管理のひとつです。
つまり、宍道湖では漁をする日や時間、獲る量を決めて、道具も工夫しながら小さなしじみを湖に残しているんだね!
宍道湖でヤマトシジミが自然に育つ理由

宍道湖のヤマトシジミは、湖の中で自然に産卵し、成長したものが漁獲されています。
その生育を支えているのが、淡水と海水が混ざり合う宍道湖特有の環境です。漁のルールだけでなく、ヤマトシジミが生息できる湖そのものを守ることが欠かせません。
淡水と海水が混ざる汽水湖の環境
宍道湖は、川から流れ込む淡水と、日本海側から入る海水が混ざり合う「汽水湖」です。
斐伊川から流れ込んだ水は、宍道湖から大橋川、中海、境水道を経て日本海へとつながっています。海水の影響を受けながらも淡水が多く流れ込むため、宍道湖には独特の汽水環境が形成されています。
ヤマトシジミは汽水域に生息する
一般に「宍道湖のしじみ」と呼ばれているのは、ヤマトシジミという種類です。
ヤマトシジミは、淡水と海水が混ざる汽水域を主な生息場所としています。宍道湖にはヤマトシジミが暮らせる広い汽水域があり、湖内で自然繁殖が行われています。
そのため、宍道湖のしじみ漁は、養殖した貝を育てて収穫する漁業ではなく、湖内で自然に育った資源を採捕する漁業です。
植物プランクトンなどを食べて育つ
ヤマトシジミは、湖水中の植物プランクトンや有機物などを取り込みながら成長します。
河川から流れ込む栄養分と汽水環境が組み合わさり、宍道湖の生態系が形づくられています。
ただし、塩分濃度や水温、酸素量などの条件は季節や天候によって変化します。ヤマトシジミに適した汽水湖であっても、毎年同じように繁殖し、同じ量まで育つとは限りません。
「養殖が不要」ではなく自然資源を利用している
宍道湖のヤマトシジミについて、「養殖をしなくても自然に増え続ける」と捉えるのは正確ではありません。
自然繁殖する資源であるからこそ、環境の変化によって量が大きく増減する可能性があります。人が一から育てる養殖とは異なりますが、漁の制限や資源調査、湖の環境保全には継続的な人の関わりが必要です。
宍道湖には、ヤマトシジミが暮らしやすい汽水の環境があるんだね。でも、自然に任せるだけではなく、湖の環境を守りながら資源の変化を見ていくことも大切なんだよ!
宍道湖のしじみは調査と環境保全によっても守られている

操業日や漁獲量を制限するだけでは、宍道湖の資源状況を正確に把握することはできません。
島根県水産技術センターでは、毎年春と秋に宍道湖のヤマトシジミ資源量調査を行っています。湖内の決められた地点から湖底の砂泥としじみを採取し、生息密度や漁場面積などをもとに、湖全体の資源量を推定しています。
増減を確かめながら天然資源と向き合う
宍道湖のしじみ資源は、長期間にわたって一定に保たれているわけではありません。
島根県の資料では、2019年春に約2万トンまで減少した後、2022年秋には約7万トンまで回復し、その後も増減していることが示されています。2025年春の推定資源量は約3万5,000トンでしたが、同年秋には約7万3,000トンと推定されました。
資源量は季節や年によって変わる
春と秋の調査結果を比べても資源量が大きく変化することがあります。
これはヤマトシジミの成長や死亡、稚貝の発生状況などが影響するためです。塩分や水温、湖底付近の酸素量など、さまざまな自然条件も関係します。
そのため、「厳しい漁のルールがあるから、しじみは絶対に減らない」とは言えません。
ルールを守りながら定期的に資源量を調べ、その時々の状態を把握することが、天然資源を利用するうえで重要になります。
宍道湖の環境を守ることも資源管理の一部
ヤマトシジミは、宍道湖の湖底で暮らしています。
しじみそのものだけを見ていても、資源を守ることはできません。水質や湖底の状態、塩分、酸素量など、ヤマトシジミが生息する環境全体を見ていく必要があります。
宍道湖では、しじみの資源調査に加えて、水質や貧酸素状態などについても継続的な調査が行われています。こうした結果を蓄積することが、湖の変化を把握し、今後の保全を考えるための基礎になります。
「自然の恵みだけじゃないよ。しじみを未来へ残すための工夫も、しっかり知ってほしいな!」
まとめ|宍道湖のしじみ資源は人と自然の両方に支えられている

宍道湖でしじみ漁が続いている背景には、ヤマトシジミが自然繁殖できる汽水湖の環境があります。
しかし、自然が豊かだからといって、しじみが際限なく増えるわけではありません。休漁日、操業時間、採捕量、漁具の目合いなどを定め、獲りすぎを防ぐルールが守られています。
さらに、資源量や湖の環境は継続して調査されており、しじみの量が年や季節によって大きく変わることも確認されています。
「宍道湖のしじみは絶滅しない」と言い切ることはできません。それでも、天然資源を将来へ残すため、漁業者や研究機関、行政、加工事業者などが、それぞれの立場で宍道湖と向き合っています。
コクヨーもその流れの一員として、漁師から受け取ったしじみを丁寧に加工し、宍道湖の味を全国の食卓へ届けていきます。
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