スーパーや鮮魚店でしじみを見ると、黒く光るものに交じって、茶色や黄色がかったものを見かけることがあります。「黒いほうが新鮮なのでは?」と思われがちですが、殻の色だけで鮮度やおいしさが決まるわけではありません。色の違いには、しじみが育った水や湖底の環境が関係しています。今回は、しじみの殻が黒くなる仕組みと、購入時に確認したいポイントを紹介します。
黒いほど新鮮……ってわけじゃないよ!殻の色には、育った湖底の環境が表れているんだ。
しじみの殻はなぜ黒くなる?

しじみの殻をよく観察すると、真っ黒なものだけでなく、濃い茶色や黄褐色、べっこう色に近いものまであります。
こうした色の違いは、単なる個体差だけで生まれるものではありません。しじみが暮らしてきた水環境や湖底の状態が、殻の表面に影響を与えていると考えられています。
殻の黒色化には鉄を含む成分が関係している
近年の研究では、しじみの殻の黒色化には、殻の表面を覆う「殻皮」と呼ばれる薄い有機物の膜が関係していることが分かってきました。
殻の表面にある「殻皮」とは
しじみの硬い殻は、炭酸カルシウムを主成分とする層だけでできているわけではありません。その表面は、タンパク質などを含む薄い殻皮で覆われています。
普段目にしている黒色や茶色、黄色などは、主にこの殻皮に現れる色です。殻の一部が擦れて白っぽく見えることがあるのも、表面の殻皮が摩耗し、その下の石灰質の層が見えているためです。
鉄と殻皮の成分が結びついて黒くなる
しじみの殻が黒くなるのは、泥に含まれる黒い物質が、そのまま表面へ付着するからだと説明されることがあります。
近年の研究では、殻の表面を覆う殻皮に含まれる成分と、水中から取り込まれた鉄が結びつくことで、黒い色が生まれると報告されています。
つまり、殻についた泥や汚れで黒く見えているのではありません。しじみが殻をつくる過程で、生息環境に含まれる鉄が関わり、少しずつ黒く色づいていくと考えられています。
泥がくっついて黒くなるんじゃなくて、殻の成分と鉄が結びついて色ができるんだよ!
泥地と砂地では殻の色に違いが出る?

しじみの殻の色は、生息していた湖底の状態を知る手がかりのひとつです。
ただし、「泥地なら必ず黒色」「砂地なら必ず黄色」と、きれいに分かれるわけではありません。水質や鉄を含む成分の濃度、pHなど、複数の条件が関係しています。
黄色いしじみは砂地、黒いしじみは泥地で見られる傾向がある
漁業の現場では以前から、黄色を帯びたしじみは砂地で、黒色を帯びたしじみは泥地で育つ傾向があると経験的に知られてきました。
泥の多い場所では黒っぽい殻が見られやすい
細かな泥や有機物が多い湖底では、鉄を含む有機成分などが水中や底質に存在しています。
そのような環境で成長したしじみは、殻皮に鉄を含む錯体が形成されやすくなり、黒色や濃い褐色を帯びることがあります。
ただし、殻が黒いからといって、必ずしもヘドロの多い場所や水質の悪い場所で育ったとは限りません。黒色は、しじみが取り込んだ成分と殻皮の反応によって生まれるものであり、色だけから生息環境を細かく断定することはできません。
砂地では黄色やべっこう色が残ることがある
砂の多い場所で育ったしじみには、黄色や茶色、べっこう色に近い殻が見られることがあります。
砂地は泥地と比べて水が通りやすく、殻の黒色化に関係する鉄を含む有機成分の状態も異なります。そのため、黒色化があまり進まず、殻皮本来の黄色や褐色が残る場合があると考えられています。
黄色いしじみは珍しく見えるかもしれませんが、変色したものや傷んだものとは限りません。しじみが育った場所の違いが、見た目に表れている可能性があります。
しじみの殻には、育った湖底の環境だけでなく、成長の過程も刻まれています。貝殻に見られる成長線から、しじみのおおよその年齢を読み取る方法については、「しじみの寿命は何年?生息環境で変わる成長スピードと貝殻の成長線から年齢を読み取る方法」で詳しく紹介しています。
黒いしじみと茶色いしじみに品質の違いはある?

殻の色が違うと、「黒いほうが味が濃い」「黄色いものは身が少ない」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、殻の色だけを見て、味や品質、身入りを判断することはできません。
殻の色は鮮度やおいしさを示す基準ではない
黒色や黄色は、しじみが育ってきた環境を反映する特徴のひとつです。購入した時点での鮮度や、中に入っている身の状態を直接示しているわけではありません。
黒いから新鮮とは限らない
黒く光る殻には、見た目の力強さや新鮮そうな印象があります。しかし、もともと黒い殻のしじみであれば、時間がたっても色そのものが急に薄くなるわけではありません。
反対に、黄色や茶色のしじみであっても、適切に扱われた新鮮なものであれば問題なく食べられます。鮮度を確認するときは、殻の色ではなく、においや殻の状態などを見ましょう。
色だけでは味や栄養価も判断できない
しじみの味や身入りは、育った場所だけでなく、季節、水温、餌となる植物プランクトンの状態、産卵の時期、個体の大きさなどにも左右されます。
そのため、「泥地の黒いしじみは濃厚」「砂地の黄色いしじみは身が締まっている」と、一律に分けることはできません。
また、殻が黒いか黄色いかだけで、オルニチンやタウリンなどの含有量を判断することも困難です。殻の色は、品質や栄養価の優劣ではなく、しじみが育った環境の違いとして捉えるのがよいでしょう。
おいしいしじみを選ぶときのポイント

店頭でしじみを選ぶときは、黒さよりも全体の状態を確認することが大切です。
パック越しでは分かりにくい場合もありますが、殻の破損や乾燥、においなど、確認できる範囲で見比べてみましょう。
色ではなく殻の状態やにおいを確認する
しじみは見た目だけで鮮度を完全に判断できる食材ではありません。ひとつの特徴だけで決めず、複数の状態を合わせて確認します。
殻に割れや大きな欠けがないか
まず確認したいのが、殻の割れや欠けです。
殻が大きく割れているものは、中身が傷んでいたり、すでに死んでいたりする可能性があります。多少の擦れや色むらは自然に生じますが、殻が潰れているものが多いパックは避けたほうが安心です。
極端に乾燥していないか
生きたしじみは、表面が適度に湿っています。殻全体が白っぽく乾き、長時間空気にさらされたように見えるものは、鮮度が低下している可能性があります。
ただし、殻の表面が白く見える原因には、殻皮の擦れや付着物などもあります。白っぽさだけで傷んでいると決めつけず、においや殻の開き方も併せて確認してください。
異臭や強いぬめりがないか
購入後にパックを開けたとき、磯の香りとは異なる強い腐敗臭やアンモニア臭がする場合は注意が必要です。
また、殻に不自然なぬめりやベタつきがある場合も、状態が悪くなっている可能性があります。少しでも異常を感じたときは、無理に食べないようにしましょう。
口が開いたまま反応しないものは取り除く
生きているしじみは、水に入れたり軽く触れたりすると、口を閉じる反応を見せることがあります。
口が少し開いていても、触れたときに閉じれば生きている可能性があります。一方、口が大きく開いたまま触れても動かないものや、異臭がするものは、調理前に取り除きましょう。
なお、加熱後に殻が開かなかったものについても、無理にこじ開けて食べるのは避けると安心です。
しじみの殻の黒さに関するよくある質問

しじみの殻の色は、見慣れていないと傷みや汚れのように見えることがあります。
ここでは、購入時や調理前に抱きやすい疑問を整理します。
殻の色に関して知っておきたいこと
黒色や黄色は、しじみに自然に見られる色です。洗い方や保存によって多少見え方が変わる場合はありますが、殻そのものの色が大きく変化するわけではありません。
砂抜きをすると殻の黒色は落ちますか?
一般的な砂抜きを行っても、殻本来の黒色が洗い流されることはありません。
殻の黒色は、表面に付いた泥だけではなく、殻皮に形成された成分によるものです。そのため、水や塩水につけただけで、黒い殻が黄色へ変わることは通常ありません。
ただし、殻に付いていた泥や汚れが落ちることで、色が少し明るく見えたり、ツヤが増したように感じたりすることはあります。
黄色や茶色のしじみは食べても大丈夫ですか?
黄色や茶色、べっこう色をしたしじみでも、色だけを理由に避ける必要はありません。
こうした色は、砂地をはじめとした生息環境の違いによって現れることがあります。異臭がなく、殻が大きく割れておらず、生きている反応が確認できるものであれば、黒いしじみと同じように調理できます。
殻の一部が白いのは傷んでいるからですか?
殻の一部が白く見える場合は、殻の表面を覆う殻皮が擦れ、その下にある白い石灰質の層が見えている可能性があります。
漁獲や選別、運搬の際にしじみ同士が擦れることでも起こるため、白い部分があるだけで腐敗しているとは限りません。
ただし、殻が割れているものや、異臭・強いぬめりがあるものは取り除いてください。
黒も茶色も、しじみが育ってきた環境のしるし。色だけでおいしさを決めないでね!
まとめ|殻の色はしじみが育った環境を映している

しじみの殻が黒くなる仕組みには、殻の表面を覆う殻皮と、生息する水に含まれる鉄などの成分が関係しています。また、黒色や茶色、黄色といった殻の違いには、砂地や泥地など、育った場所の環境が表れていることがあります。
ただし、殻の色は鮮度や味、栄養価の優劣を示すものではありません。購入するときは色だけで判断せず、殻の割れや乾燥、においなど、全体の状態を確認することが大切です。
コクヨーでは、宍道湖で育ったしじみを、ご家庭で使いやすい商品にしてお届けしています。毎日の味噌汁をはじめ、宍道湖産しじみならではの味わいを楽しみたい方は、コクヨーオンラインショップの商品もぜひご覧ください。
この記事へのコメントはありません。