普段目にするしじみは、小さくてもきちんと二枚の殻を持っています。では、生まれた瞬間からあの姿をしているのでしょうか。
実は、私たちが普段扱っている宍道湖産ヤマトシジミにも、卵から幼生を経て、湖底で暮らす稚貝になるまでの段階があります。受精した直後から、いきなり見慣れたしじみの形になるわけではありません。
今回は、島根県や研究機関が公開している資料をもとに、産卵から幼生、湖底へ着底するまでの流れを分かりやすく紹介します。島根県:島根の豊かな川と湖
湖の中では、小さなしじみが生まれるまでにいろんな変化が起きているんだよ〜
しじみはどうやって生まれる?

ヤマトシジミは、親貝から小さなしじみがそのまま出てくるわけではありません。
島根県の資料によると、ヤマトシジミの産卵は主に夏に行われます。資料によって6〜9月、7〜9月ごろと幅があり、年や場所、環境条件によって産卵時期は変わります。
ヤマトシジミにはオスとメスがいる

ヤマトシジミには、オスとメスがいます。
島根県の資料では、成熟した時期にはオスの体内で精巣が発達し、メスでは卵がつくられることが紹介されています。外側の殻を見ただけでは分かりにくいものの、繁殖の仕組みはオスとメスに分かれています。
産卵の時期になると、それぞれが繁殖の準備を整えます。
成長したヤマトシジミは、産卵の時期になると次の世代を残すための準備を整えます。
卵と精子を水中へ放出して受精する
ヤマトシジミは、メスが卵を、オスが精子を水中へ放出します。
島根県の説明では、卵と精子はそれぞれ出水管から放出され、水中で出会って受精します。メスが卵を体の中で育てて、小さなしじみを産み落とす仕組みではありません。
卵は直径0.1mmほどと非常に小さく、肉眼で一粒ずつ確認するのは難しい大きさです。島根県では、1個体のメスが1回に数十万個の卵を放出すると紹介しています。
水中で受精した卵は、ここから姿を変えながら成長していきます。
生まれたばかりのしじみはどんな姿?

受精したばかりのヤマトシジミは、私たちが食卓で見るような丸みのある二枚貝の姿ではありません。
受精卵が細胞分裂を繰り返し、まず幼生へと変化します。その後、小さな殻をつくり、水中を漂う期間を経て湖底で暮らす稚貝になります。
受精卵から幼生へ成長する
水中で受精した卵は、細胞分裂を続けながら発生します。
研究では、ヤマトシジミは受精卵からトロコフォア幼生という段階を経て、その後「D型幼生」と呼ばれる段階へ移ることが確認されています。D型という名前は、小さな殻の輪郭がアルファベットのDに似ていることに由来します。
受精直後から、私たちが知っているしじみの形をしているわけではありません。発生の途中で幼生となり、やがて小さな殻を備えた姿へ変化していきます。
幼生はしばらく水中を漂う
殻を持つ段階になっても、すぐに湖底で暮らし始めるわけではありません。
ヤマトシジミには、水中を漂って過ごす浮遊幼生の時期があります。島根県水産技術センターによる宍道湖の調査でも、夏に多数の浮遊幼生が確認されており、時期によって分布する場所も変化しています。
水中を漂うことで、生まれた場所から水の流れに乗って移動することもあります。島根県も、幼生が水流によって離れた場所まで運ばれる場合があると説明しています。
「しじみは湖底にいる」というイメージがありますが、生まれて間もない時期には、水中を漂いながら過ごす段階があります。
小さな殻を持ち、湖底へ着底する
幼生は発生が進むにつれて、小さな殻と足を備え、やがて水中を漂う生活を終えます。
そして湖底へ降り、底で暮らし始めます。これを「着底」と呼びます。
着底までにかかる時間には、研究条件による違いがあります。
島根県の一般向け資料では、受精から1週間ほどで稚貝となって着底すると説明されています。
一方、ヤマトシジミを水温別に飼育した研究では、25℃の条件で受精後12日目に多くの個体が着底しました。15℃では18日間の実験期間中に着底が確認されなかったことからも、発生の速さは水温などの条件によって変わることが分かります。
着底までの日数は一定ではなく、水温などの条件によって変わります。資料や研究結果を見ると、暖かい時期では1週間前後から十数日ほどがひとつの目安になります。
稚貝になったヤマトシジミは湖底で成長する

着底すると、ヤマトシジミは水中を漂う生活を終え、湖底で暮らし始めます。着底したばかりの稚貝は非常に小さく、普段目にするしじみとは大きさも殻の形もまだ違います。
着底すると湖底での生活が始まる
島根県の資料では、着底したばかりの稚貝は砂粒ほどの大きさとされています。
宍道湖で行われた調査でも、7月から1mmにも満たない初期稚貝が確認され、季節が進むにつれて湖内の各地点で見つかっています。
着底後は湖底を生活の場として成長し、やがて私たちが知っているヤマトシジミの姿になっていきます。
宍道湖の環境はヤマトシジミの繁殖にも関係している

ヤマトシジミが卵を産めば、それだけで稚貝まで育つわけではありません。
受精卵や幼生が順調に発生するには、水温や塩分などの条件も関係しています。特に初期の発生では、塩分が大切な要素のひとつです。
幼生の発生には塩分が関係する
ヤマトシジミの成貝は比較的幅広い塩分環境で暮らせますが、卵や浮遊幼生の時期は塩分の影響を受けやすいことが知られています。
島根県水産技術センターが宍道湖で行った調査では、幼生の発生に適した条件として2PSU以上の塩分が挙げられており、2012年には水温が25℃を超えた時期と幼生の出現時期がおおむね一致したことも報告されています。
また、宍道湖を対象にした別の研究では、暖かい時期の上層塩分が3.5を下回っていた年には、産卵盛期の前半に生まれた稚貝が確認されず、塩分の高かった年には多く確認されました。研究者は、幼生の加入やその後の成長に湖水の塩分が影響する可能性を示しています。
繁殖の状況は塩分だけで決まるものではなく、水温や場所、その年の湖水の状態なども関係します。
私たちが普段扱っている宍道湖産ヤマトシジミも、こうした湖の環境の中で産卵し、幼生期を経て稚貝へと育っています。
小さな幼生が湖を漂って、やっと湖底での暮らしが始まるんだね〜
まとめ

ヤマトシジミは、オスとメスが卵と精子を水中へ放出し、受精した卵から幼生へと育ちます。幼生には水中を漂う時期があり、小さな殻や足を備えたあと湖底へ着底して稚貝になります。こうした繁殖には、宍道湖の水温や塩分などの環境も関係しています。
普段何気なく食べているしじみにも、生まれてから湖底で育つまでの過程があります。コクヨーでは、宍道湖で育ったヤマトシジミをお届けしています。興味を持っていただけた方は、当サイトの商品やしじみに関するほかの記事もぜひご覧ください。
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