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湖底のしじみ

しじみは何を食べて生きている?エラでプランクトンを取り込む仕組み

しじみは、湖底でじっとしているように見えて、実は水を取り込みながら小さな餌を食べ続けています。主な餌は水中を漂う植物プランクトンなどですが、種類によって栄養価は同じではありません。宍道湖のヤマトシジミは、どのように餌を取り込み、体内へ運んでいるのでしょうか。エラを使ったろ過摂食の仕組みや、汽水湖に現れるプランクトンの違いを知ると、しじみの成長を支える宍道湖の環境が見えてきます。

しじみちゃん

「しじみちゃんです!じーっとしているように見えても、お水の中ではしっかりお食事中だよ!」

しじみは何を食べて生きている?

しじみ

ヤマトシジミが暮らす湖や川の水には、肉眼ではほとんど見えない小さな生き物や有機物が漂っています。

しじみは、そうした水中の微細な粒子を水と一緒に取り込み、餌として利用しています。

主な餌は植物プランクトンなどの微細な粒子

島根県の研究資料では、ヤマトシジミは水中の植物プランクトンなどを餌とする「ろ過食者」と説明されています。

植物プランクトンとは、水中を漂いながら光合成を行う小さな藻類のことです。宍道湖では、珪藻、緑藻、藍藻など、さまざまな種類が確認されています。

植物プランクトンだけを食べるわけではない

しじみの餌を「植物プランクトンだけ」と説明するのは正確ではありません。

宍道湖産ヤマトシジミの排出物を調べた研究では、植物プランクトンのほか、湖底付近に付着している底生性の微細藻類や、細かな有機物も取り込んでいることが確認されています。

水中や湖底付近にある小さな粒子を幅広く取り込み、その中から利用できるものを消化していると考えると分かりやすいでしょう。

プランクトンなら何でも同じではない

植物プランクトンは、種類によって含まれる脂肪酸や栄養成分が異なります。

宍道湖に現れる珪藻、緑藻、藍藻をヤマトシジミに与えた試験では、珪藻を与えた個体で脂肪酸量が最も増えました。特に珪藻にはEPAが多く含まれ、ヤマトシジミにとって有用な餌になり得ると報告されています。

つまり、餌は単に多ければよいのではなく、どのようなプランクトンが発生しているかも重要です。

ヤマトシジミがどのくらいの年月をかけて成長し、何年ほど生きるのかについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。

しじみはエラを使って餌を取り込む

しじみには魚のような大きな口や、餌を追いかけるための目はありません。しかし、体の中には小さな餌を効率よく取り込む仕組みがあります。

その中心となるのが、呼吸にも使われるエラです。

水と一緒に餌を取り込む「ろ過摂食」

しじみは、殻の隙間から水を体内へ取り込みます。入ってきた水がエラを通る際に、水中を漂う微細な藻類や有機物が粘液に絡め取られます。

捕らえられた粒子は、エラの表面にある繊毛の動きによって口へ運ばれ、胃や腸などの消化器官へ送られます。

このように、水の中から細かな餌をこし取って食べる方法を「ろ過摂食」と呼びます。

しじみにも小さな口がある

「しじみには口がない」と思われることもありますが、実際には軟体部に小さな口があります。

研究では、水中に加えた微細な粒子が口から胃、腸管へ取り込まれ、時間の経過とともに中腸腺などへ移る様子が確認されています。

殻を閉じていると外からは見えませんが、体内では餌を運び、消化し、排出する働きが絶えず行われています。

取り込んだ粒子をすべて食べるわけではない

しじみは、水と一緒に取り込んだ粒子をすべて消化するわけではありません。

口へ運ばれる前に不要と判断された粒子は、粘液でまとめられ、「擬糞」と呼ばれる形で体外へ出されます。一方、口から消化管へ入ったものも、十分に消化されないまま排出される場合があります。

しじみの体内では、取り込む、選り分ける、消化する、排出するという複数の働きが行われているのです。

宍道湖ではどのようなプランクトンが発生する?

宍道湖

宍道湖は、川から流れ込む淡水と日本海から入る海水が混ざり合う汽水湖です。

塩分、水温、日照、栄養塩などの条件は季節や年によって変化し、それに伴って湖内に現れるプランクトンの種類も変わります。

宍道湖の餌環境は季節によって移り変わる

島根県が行った2023年の調査では、微細藻類の構成は月によって異なり、渦鞭毛藻が多い時期のほか、珪藻が優占する月も確認されました。

ヤマトシジミの餌として価値が高いとされる珪藻についても、時期によって異なる種類が検出されています。

珪藻

珪藻は、ガラス質の殻を持つ植物プランクトンの仲間です。

宍道湖のヤマトシジミを使った給餌試験では、珪藻を与えた個体で脂肪酸量が大きく増えたことから、栄養価の高い餌の一つと考えられています。

緑藻や藍藻

宍道湖では、緑藻や藍藻も確認されています。

ただし、同じ藍藻でも種類によって脂肪酸の組成が異なります。研究では、多価不飽和脂肪酸をほとんど含まない藍藻も確認されており、植物プランクトンであれば、すべて同じように成長を支えるわけではありません。

宍道湖の餌環境を考えるときは、発生量だけでなく、種類や季節による変化にも目を向ける必要があります。

しじみは湖の水をきれいにしている?

水質

水中の細かな粒子を取り込むしじみには、湖の物質循環に関わる生き物としての一面があります。

ただし、「しじみが水を吸えば、汚れがすべてなくなる」と考えるのは正確ではありません。

ろ過摂食が湖の環境に与える影響

しじみは水中の植物プランクトンや懸濁物を取り込み、その一部を消化します。

食べられなかった粒子は擬糞や糞として湖底へ送られるため、水中に漂っていた物質を底へ移す働きがあります。こうした活動は、湖の中で行われる物質循環の一部です。

しじみのろ過活動は、一年を通して同じではありません。水温が下がる冬は、砂泥の中へ深く潜り、餌を取り込む活動や体の動きも穏やかになります。

一般に「しじみの冬眠」と呼ばれることがありますが、完全に眠って何も活動しなくなるわけではありません。低水温の中で消耗を抑えながら、春を待つように過ごします。

冬のしじみが湖底でどのように過ごしているのかは、こちらの記事で詳しく紹介しています。

「天然の浄水器」と言い切るのは難しい

しじみのろ過速度は、個体の大きさ、水温、塩分、酸素の状態などによって変化します。

また、取り込んだ成分のすべてが体内に蓄えられるわけではなく、糞や排出物として再び環境中へ戻るものもあります。

そのため、「しじみ1個が1日に必ず何リットルもの水をきれいにする」と一律の数字で説明するよりも、懸濁物を取り込み、湖の物質循環に関わっていると表現するほうが適切です。低水温の条件でもヤマトシジミがろ過活動を行うことは、別地域で行われた研究でも確認されています。

購入したしじみは長期飼育向きではない

スーパーや通販で購入した食用のしじみを、水槽で長期間飼育するのは簡単ではありません。

餌だけでなく、塩分、水温、酸素、底質、水質などを適切に保つ必要があります。豆乳などを水に加える方法は、水の腐敗や酸素不足を招くおそれがあるため、安易に勧めることはできません。

食べる前に観察する場合も、常温の水に長時間置かず、商品の保存方法や砂抜き方法に従いましょう。

しじみちゃん

「小さな体で、水を取り込んで、選んで、食べる。しじみって、見かけによらず働き者なんだよ!」

まとめ

宍道湖産ヤマトシジミ

しじみは、水中に漂う植物プランクトンや微細な有機物を、エラでこし取りながら食べて生きています。殻の中へ取り込んだ水から必要な粒子を口へ運び、不要なものは体外へ出す。小さな体の中には、宍道湖の環境を生き抜くための精巧な仕組みが備わっています。

また、ヤマトシジミの成長を支えているのは、餌となるプランクトンだけではありません。淡水と海水が混ざり合う塩分環境や水温、酸素、湖底の状態など、さまざまな条件が重なり合うことで、宍道湖のしじみは少しずつ育っていきます。

しじみちゃん

「宍道湖の中で育つ時間まで知ると、いつものしじみがちょっと特別に見えてくるね!」

コクヨーでは、こうした宍道湖の自然の中で育ったヤマトシジミを扱っています。一粒ずつがどのような環境で育ち、どのような仕組みで命をつないでいるのか。その背景も含めて知っていただくことが、宍道湖しじみのおいしさや魅力を伝えることにつながると考えています。

普段は殻の中に隠れて見えないしじみの食事。次にしじみ汁やしじみ料理を味わうときは、湖の水を取り込みながら育った姿にも、少し思いを巡らせてみてください。

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